プラスチック分析にダイナミクスをもたらす

2018-07-12 | Corporate

「万物は流転する」という言葉を残したのは、ギリシャの哲学者ヘラクレイトスです。単に見た目だけでは、必ずしも正しく判断できるとは限りません。ともかく固形物は存在しています。プラスチックに特有の性質を持たせるには、高度に架橋された分子構造、安定剤、色、添加剤などの処方が必要です。目的は、プラスチックに気密性を持たせたり(飲料用ボトル)、溶剤への耐性を持たせたり(ガソリンタンク)、硬く丈夫にしたり(自動車のボディ)することです。適切な構造特性相関の開発に活用できる分析手法が、動的粘弾性測定(DMA)です。様々な温度下で固形サンプルに曲げ、ねじり、圧力を加え、様々な条件での機械特性を評価します。6月12日にアントンパール社から発表された新しいMCR 702マルチドライブを使用することで、プラスチックメーカーはこのような分析が可能になります。

MCR 702マルチドライブは、アントンパール社の人気のレオメータ、MCR 702 TwinDriveをさらに発展させたものです。製品担当者のAlexander Klutzによると、MCR 702 TwinDriveでは、上下に搭載されたロータリーモーターで液体、ジェル、条件付きで固体のサンプルを分析します。新しいMCR 702マルチドライブでは、下部に搭載されたリニアモーターによって、サンプルに対して直線的な圧力、曲げ、伸長を加えることができます。これはロータリーモーターでは不可能です。デバイスの最大ストロークは9.4 mmですが、最小変位は低ナノメートル範囲であると、製品担当者のKlutzは説明しています。MCR 702マルチドライブは、このような高精度の位置制御機能を備えながら最大40 Nの力を出せます。1 kgの物体が持つ下向きの力が約10ニュートンであることを考慮すると、磁場で制御されるリニアモーターとしては非常に優れています。この新しい装置を、アクセサリーであるCTD 600 MDR温度チャンバーと組み合わせると、-150~350 °Cの固体について曲げ、ねじれ、引張、圧縮に対する挙動が得られるので、オールラウンドの分析が可能になります。

MCR 702マルチドライブは、本格的な動的粘弾性測定とハイエンドレオメータの機能範囲を組み合わせた、市場で唯一の装置です。測定システムの自動認識といった確立された機能に加え、最適なアライメントを行う自動位置調整機能などもあります。すでにMCR 702 TwinDriveまたはMCR 502 TDRをお持ちの場合は、これらの装置を簡単にマルチドライブシステムにアップグレードできます。下部のモーターを交換するだけです。製品マネージャーのGunther Arnoldは、「従来のMCR 702 TwinDriveまたはMCR 502 TDRがあれば、CPUを置換してファームウェアアップデートを実行するだけです」と説明しています。MCR 702マルチドライブのターゲットグループは、ポリマー業界及びプラスチック研究分野の学術機関です。 アントンパール社はレオロジー分野で35 %以上の市場シェアを持ち、世界市場をリードしています。

プラトンはヘラクレイトスの言葉を展開し、「万物は流転し、何者もとどまることはない」と言いました。絶えず発展し変化するというその言葉には、進化という意味が隠されています。MCR 702マルチドライブはその進化を立証し、哲学とテクノロジーが相互補完的であることを裏付けています。