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化粧品及び医薬品の粘弾性測定

化粧品及び医薬品の製造、包装、充填、保管では、粘弾性特性が重要です。消費者は、スキンクリームのつけ心地なども重視します。歯磨き粉ならチューブから絞り出したときに歯ブラシの上にとどまること、薬なら適切な状態で患部に届くことが求められます。

化粧品と医薬品には、外用のもの(ローション、ジェル、クリームなど)と内用のもの(錠剤やシロップ)があり、液体、半固体、及び固体の形で存在します。これらの形態のいずれであっても、レオメータで測定できます。

化粧品及び医薬品の粘弾性挙動

化粧品及び医薬品産業では、様々な製品試験にレオロジーが幅広く利用されています。様々な温度におけるクリームの安定性測定といった非常に一般的な試験から、非常に高価で時間のかかる少量サンプル(抗体やハイドロゲル注射剤など)を使用した難しい測定まで、多岐にわたります。このような材料試験では、例えば常温と体温で再現性のある分析結果を生成できる、極めて感度が高く正確な装置が必要です。

化粧品及び医薬品の粘弾性測定

粘弾性測定は以下の用途に有効です。

  • 原材料、最終製品、製造プロセス(混合、ポンピング、梱包、充填)の品質を管理する
  • 様々なパラメータ(配合、保管時間、温度など)が最終製品の品質と受容性に及ぼす影響を評価する
  • 生体液や細胞の流れや変形を試験する

測定対象となる代表的な化粧品及び医薬品:

ヘアジェル

ヘアスプレーだけでなく、ヘアジェルも市場で最もよく使用されるヘアケア製品の1つです。最近のヘアジェルは、非常に高い要件を満たす必要があります。強く、耐湿性があり、ヘアスタイルを長時間キープすることができ、また、手や髪がベタベタしないことも大切です。

ヘアジェルの粘弾性測定

ジェル(gel)は「ゼラチン(gelatin)」の略語で、語源は「ゼリー」(粘度の高い果汁や肉汁)と同じラテン語です。ジェルは、1つ以上の固体相と液体相が3次元の網目構造となった微細分散系です。粘弾性を持ち、レオメータで測定できます。

製品の粘度と降伏点を継続的に測定することによって、常に高品質を維持できます。ヘアジェルの粘度は、開発時の製品評価、及び製造工程において特に重要なパラメータです。降伏点は、消費者が最終製品を評価する際に特に重要です。降伏点は、サンプル静止時の弾性特性に直接対応します。ジェルの降伏点が高い場合やゲル性が強い場合、消費者は「ボリュームがある」と感じます。強いゲル性は、多くの消費者に品質の高い製品という印象を与えます。

回転式レオメータを使用すると、回転状態でせん断応力を制御するテストを行い、フローカーブ粘度カーブを測定できます。これに基づき、Herschel-Bulkleyフローフィッティングモデルなどを使用して降伏点を計算できます。別の方法として、振動状態で振幅掃引を実行し、降伏点を計算することもできます。

この測定には、ペルチェ素子温度制御システムを装備したレオメータが必要です。

マニキュア液

マニキュア液は、様々な粘弾性要求を満たす必要があります。ブラシにしっかりと付着する粘度が必要ですが、粘度が高すぎるとブラシから爪へと移りません。さらに、塗った後は、ブラシの跡が残ることなく平らに広がる必要があります。塗った後にすぐ動けるように、速乾性も必要です。

マニキュア液の粘弾性測定

マニキュア液では、チキソトロピー回復が非常に重要な要素になります。チキソトロピーは、時間に依存する特殊な粘度挙動です。チキソトロピー性を持つ材料は、一定のせん断応力下で粘度が低下します。せん断を停止すると、材料はほぼ元通りに回復します。この挙動は、材料内の構造の分解と回復によって観察されます。これは、回転試験または振動試験で3インターバルのチキソトロピーステップ試験を行うことによって測定できます。

マニキュア液の配合によってチキソトロピー回復の速度が異なります。チキソトロピー挙動を測定することで、マニキュア液を使用する際にどれくらい振る必要があるかなどがわかります。

この測定には、ペルチェ素子温度制御システムを装備したレオメータが必要です。

スキンクリーム

化粧品でも医薬品でも、スキンクリームが消費者に受け入れられるための重要なポイントは、使用感が良いことと長期間安定していることです。これらの特性は材料に大きく依存しますが、製造工程も影響します。乳化剤や安定剤といった機能特性を持つ原料にはアレルゲンとされるものもあり、消費者に受け入れられないことがあります。このような場合は別の原料に置き換える必要がありますが、製品の品質は維持しなければなりません。同様に、製造コスト削減などの理由で原料を変えても、製品の代表的な物理特性は維持する必要がある場合もあります。

スキンクリームの粘弾性測定

配合や製造工程を変更する場合、最終製品の特性に及ぼす影響を特定し評価する第一歩となるのが、レオメータによるエマルションの物理特性評価です。さらに、振幅掃引(周波数を一定の値に維持して振幅を変化させる振動試験)を行うと、比較的短時間で最終製品の機械的安定性を測定できます。非常に低いひずみまたは応力の値範囲(線形の粘弾性(LVE)範囲 と呼ばれる)における貯蔵弾性率G'損失弾性率G''の値を使用することによって、この試験から、静止時のクリームの構造強度及び粘弾性に関する情報を得られます。

この測定には、ペルチェ素子温度制御システムを装備したレオメータが必要です。