定性・定量分析を改善する自動・真空型 X 線光学系

X 線光学系を正しく選択すれば、XRD データの品質を大幅に向上させ、定量・定性分析を容易にし、回 折データに潜む重要な情報を見落とさずに実験を進めることができます。

1 序論

X 線回折(XRD)は、粉体やバルク材などの多結晶サンプ ルの定量・定性分析に用いられます。材料に含まれるす べての結晶相を特定し、各相の正しい存在比率を定量化 することは非常に難しい作業です。特に、特定の相が全 体の数パーセントしか占めていないサンプルでは、その傾 向が顕著です。分解能が高く、バックグラウンドノイズが少 ないデータ品質は、この点で非常に有用です。XRD 測定 の品質は、サンプルの特性によって決まる部分もあります が、最高のデータ品質を実現するために最適化されたハ ードウェアを使用すれば、大幅に改善することができま す。アントンパールの粉末 X 線回折装置 XRDynamic 500 は、特許取得済みの TruBeamTMコンセプトにより、比類の ないデータ品質と高い汎用性、測定効率を兼ね備えてお り、このような測定に最適です。

 

1.1 TruBeamTM

TruBeam™コンセプトは、データ品質と測定効率に利点を もたらすハードウェアと技術的機能で構成されています。 360mm または 400mm のゴニオメーター半径は、一般的 な粉末 XRD 装置よりも大きいため、非常に高い測定分解 能を実現できます。半径が大きいことの欠点として、ビー ムが多くの空気を通過するため、バックグラウンドが高くなり、空気中の散乱やビームの吸収により強度が低下す ることが考えられます。しかし、この問題は、 XRDynamic 500 の独自の完全真空光学ユニットによって 克服しています。真空のビームパスが空気散乱を減少さ せることで、測定バックグラウンドは低くなり、S/N 比が向 上し、全体的なデータ品質が向上します。また、 TruBeamTMは、すべてのビーム光学系の完全自動化を特 徴としており、異なる発散スリットサイズ、ビームマスク、ソ ーラースリットによる複雑な測定をプログラムして全自動 で実施可能です。また、実験中にビーム形状を自動的に 切り替えることができるため、Bragg-Brentano 光学系で Kβ フィルターを使ってサンプルを測定した後、モノクロメ ーターを使って測定することも可能で、その間に装置の操 作は一切必要ありません。XRDynamic 500 で使用できる 豊富なサンプルステージと合わせて、驚くほど多様で複雑 な実験を圧倒的な効率で行うことができます。このアプリ ケーションレポートで紹介する 7 例の測定のうち 6 例は、 装置を手動で操作することなく行っています。

 

1.1 実験の動機

このアプリケーションレポートでは、さまざまな光学素子が XRD 測定のデータ品質にどのように影響するのか、特に 非常に低い濃度で存在する相の検出にどのように影響す るかを可視化します。炭酸カルシウム(CaCO3)にルチル (TiO2)を混ぜたものと、炭酸カルシウムにグルコース (C6H12O6)を混ぜた 2 種類のサンプルを、相対量を変えて 用意しました。CaCO3は、グルコースとの混合物として食 品科学で見られる他、TiO2 とともに建築材料や塗料の両 方で見られる汎用性の高い材料です。このサンプルは、 科学者が日々の測定で遭遇しうる物質の種類を代表して います。

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