様々なオリゴ糖類を使用して安定化させた鉄ナノ粒子のDLS、ELS、SAXSによる構造解析

DLS と SAXS は相補的な測定手法であり、粒子径を測定できるだけでなく、粒子形状とコアシ ェル構造に関する情報も得られます。また、ゼータ電位測定では、サンプルの分散安定性に関 するデータも得られます。このアプリケーションレポートでは、医療用途向けの様々な鉄剤の 特性評価に有効な補足的結果に焦点を当てます。

諸言

年齢、健康状態、体重によっても異なりますが、通常、 人体に含まれる鉄の量は2~4グラムです。体内の鉄 分は主にヘモグロビンと結合し、酸素を赤血球に結合 させることができるタンパク質複合体になります。残 りの部分の鉄は、ヘモシデリン、ミオグロビン、フェ リチン、エンザイムと結合して貯蔵され、必要に応じ て生体内に放出されます。鉄欠乏症は、世界で最も広 範囲に見られる栄養不足の一つです。鉄欠乏症の原因 としては、以下のようなものが考えられます。

  • 食物の摂取量の不足、栄養不良など、鉄摂取量の 不足
  • 妊娠中、授乳期、または青少年の成長期などにお ける鉄需要の増大
  • 急性失血、慢性失血、あるいは手術などによる鉄 喪失の増加

出産年齢の女性、高齢者、アスリート、慢性炎症性疾 患の患者は特に、鉄欠乏症と貧血の危険が高くなりま す。このような場合には、様々な鉄剤で代用する必要 があります。鉄欠乏性や貧血への対処には、錠剤、輸 液、総合ビタミン剤など確立された様々な治療薬があ ります。高分子量の鉄剤は多くの場合、合併症に関連 するものであるため、スクロース鉄、カルボキシマル トース第二鉄、ナトリウムグルコン酸第二鉄などの低 分子量の製剤だけが使用されます。このようなタイプ の鉄剤は、粒子径が数~数十ナノメートルのコロイド 分散体です。粒子は、鉄のコアとこれを安定化させる ための炭水化物の外殻から構成されています。鉄を血 流に直接注入することはできないため、細胞内への鉄 の放出と吸収をコントロールできる鉄炭水化物複合体 が使用されます。細胞内に放出された鉄はフェリチン とトランスフェリンに渡され、体内で使用されます。 医薬品に関する厳しい要件を満たすためには、販売、 投与される前に、注射製剤の特性を評価し完全な試験 を実施しなければなりません。このアプリケーション レポートでは、DLS/ELS 及び SAXS という相補的な 2 つの方法を使用して、粒子径、形状、ゼータ電位か ら、2 つの異なる鉄ナノ粒子製剤の特性を評価、分析 しています。DLS/ELS (動的光散乱法/電気泳動光散乱 法)と SAXS (小角 X 線散乱法)は、様々な鉄剤の特性 評価に有効な相互に補完し合う結果が得られる特徴が あります [1]

参考文献

1. Pal, Amy Barton. Complexity of intravenous iron nanoparticle formulations: implications for bioequivalence evaluation. Annals of the New York Academy of Sciences. 1-9, 2017.

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